ライン下りと古城 12. ラインフェルス城（Burg Rheinfels）
765年ころベネディクト会大修道院プリュムに、ザンクトゴアーの小さな教会が寄進された。修道院の広大な所領は城代によって管理された。その城代権は1185年以降、既にザンクトゴアー付近のライン河畔に小さな税関城を所有していたカッツェンエルンボーゲン伯が獲得した。
13世紀、カッツェンエルンボーゲン伯が領邦君主の地位を得ると、ディーター５世は即位した1245年からザンクトゴアーの上方に最初の城塞を建設し始めた。ラインフェルスと名付けられたこの城塞が完成すると彼は1255年にライン川の関税を引き上げた。これによって商業活動が妨害されたライン都市同盟は、同年にラインフェルス城を１年と14週間包囲攻撃したが敗退した。
14世紀にさらに所領を拡大したカッツェンエルンボーゲン伯は、権力の中心ダルムシュタットと、ラインフェルス城を含む上下伯領を守るため、ザンクトゴアーの対岸ザンクトゴアールスハウゼンにねこ城を、さらに上流にライヒェンベルク城を建設した。ディーター５世が1276年に死去すると、ヴィルヘルム１世（1276-1331）、ヴィルヘルム２世（1331-85）、エーバーハルト５世（1385-1402）、ヨハン３世（1402-44）、フィリップ老伯（1444-79）と続いた。
フィリップ老伯の２人の息子は若くして死去していたため、彼の遺領は女婿ヘッセン方伯ハインリヒ３世に譲られた。これに対して相続権を要求したナッサウ伯との間で何十年にもわたる争いが起こったが、1557年にヘッセンに有利な和解が成立した。
ラインフェルスを領有したヘッセン方伯としては、オーバーヘッセンのヴィルヘルム３世、ニーダーヘッセンのヴィルヘルム２世、そして最後に1509年から1567年まで統治し1527年に宗教改革を導入したフィリップ高潔伯がいる。1567年に彼が亡くなると、４人の子に領土は分有された。（→ねこ城のページ参照）
ねこ城とラインフェルス城などを相続したフィリップ若伯は、ラインフェルス城をルネサンス様式の宮殿に改築した。その特徴は石組みの城の上に建て増しした階層の赤いハーフティンバー（木骨組み）の切り妻壁だった。
1583年にフィリップ若伯が死去すると、兄のヘッセン=カッセル伯ヴィルヘルム４世が宮殿を相続し、1592年にはその息子モーリッツ学者公が受け継いだ。モーリッツは製図画家で数学者でもあるヴィルヘルム・ディリッヒに所領を素描と地図で把握するように委託した。そのため1607年にラインフェルス城の細部まで正確な記録が完成した。
ヘッセン=カッセル家がこの地域を相続したことに対し、ヘッセン=ダルムシュタット家は最初からこれを承認していなかった。この争いは、三十年戦争中の1621年に、ヘッセン=ダルムシュタット家のルートヴィヒがラインフェルス城を攻撃した時に最初の頂点を迎えたが、この時彼は城を入手できずに終わった。しかしダルムシュタット家に相続権を認めた帝国裁判所の判決に励まされ、1626年に再び城を攻撃したが、40門の大砲を装備した8千名の軍をもってしても攻略することはできなかった。ところがカッセル側の守備隊は君主モーリッツの命令に従って城をダルムシュタット側に明け渡した。
その後1647年にヘッセン=カッセル家が城を奪還し、翌48年にヘッセン=ラインフェルス伯エルンストが城とその領域を相続した。1626年の戦災が修復され、さらに1657-74年にかけて大砲の威力を顧慮した巨大な要塞に拡張された。
プファルツ継承戦争で、ルイ14世軍は1692年にラインフェルス城まで進撃した。タラール将軍に率いられた２万８千名の部隊は、ゲッツ要塞司令官に率いられた４千名の防衛部隊と対決。フランス側の大砲60門と、これに打ち返す要塞の砲列は、双方に多大な損害を与えた。14日間の戦闘をへて1693年1月1日、ルイ14世は攻略を断念し撤退。ラインフェルス城は不敗を維持した。
要塞はその後修復・拡張され、所有者が変わってから、1754年にヘッセン=カッセルの所領となった。七年戦争中の1758年にフランス軍が無血で占拠したころには建物の状態は悪くなっていたが、1763年までフランス軍はここにとどまった。
フランス革命の理念はライン河畔に住む人々の考えに合致したため、フランス革命軍が迫ってきてもそれほど戦闘意欲は起きなかった。加えて城は時代遅れになっていたため、1794年に再び無抵抗でフランス軍に明け渡された。フランス軍は1796年に要塞施設を爆破し、翌年に城と天守も破壊された。
1812年、フランス軍は城跡を競売にかけ、ザンクトゴアーのペーター・グラスの手に渡った。グラスは1819年から廃材をエーレンブライトシュタイン要塞の建設のために売却した。
1843年、プロイセンのヴィルヘルム王子が廃墟を取得し、取り壊しは中止された。1925年、廃墟は、補修と保存を条件にザンクトゴアー市に与えられ、今日に至っている。
