「第９」の諸問題(3) デュナーミクについて
第４楽章「vor Gott !」のフェルマータ部分
この部分は従来のブライトコプフ版スコアでは、ティンパニだけにディミヌエンドがついている。
こういった演奏はフルトヴェングラーやカラヤンなど多くの録音で聞ける。ティンパニが静かになることで、合唱が浮かび上がり壮麗な感じがするのである。
ところが、このたび発行されたデル・マー校訂のベーレンライター版では、全パートffのままである。最近のオリジナル派の演奏は皆このタイプで、さらにフェルマータも短めで、何となくあわただしい。
では、ベートーヴェンはどういった演奏を望んでいたのだろうか。
プロイセン国王ヴィルヘルム３世への献呈スコアには、「全オーケストラがディミヌエンド」「合唱はクレッシェンド」になっているという。またウィーン楽友協会に残された初演時の第１ヴァイオリンのパート譜にもディミヌエンドが書かれている。
ということは、ベートーヴェンは合唱をオケから浮かび上がらせる、より効果的な演奏を望んでいたことは明らかである。実演ではクルト・マズアがこういう演奏をしている。
MIDIファイルを３つ用意した。
