ハノーファー(ブラウンシュヴァイク=リューネブルク)

 ブラウンシュヴァイク=リューネブルク侯国(Braunschweig=Lüneburg)は、1235年、ヴェルフ家の下ザクセン領から生じた領邦である。この国はのちに大きく2つの家系に分かれた。

 1つは、ブラウンシュヴァイク家系である。これはブラウンシュヴァイク(ハノーファー東方)を首府とするブラウンシュヴァイク侯国となり、ドイツ連邦・ドイツ帝国においてもブラウンシュヴァイク公国として存続した。

 もう1つは、リューネブルク家系である。これは正式国名はブラウンシュウァイク=リューネブルクであるが、1692年に選帝侯となってからは一般に首府の名をとってハノーファー選帝侯国と呼ばれるようになった。さらにこの国は、1714年にイギリス王位を得て1837年まではこれと同君連合状態であった。(1837年、ヴィクトリア女王即位とともに、女子相続を認めないハノーファーは同君連合解消。)
 この時期はハノーファー政府はロンドンにあり、その指示を受けてハノーファーの現地貴族が政治を行った。1737年にゲッティンゲン大学を創立。また18世紀初めにスウェーデンからブレーメン侯国を得てエルベ・ヴェーザー両川間の海岸地帯を支配した。フランス革命でナポレオンに支配され、北部はフランス領、南部はヴェストファーレン王国に併合された(1807)。ナポレオン没落で独立を回復してハノーファー王国となり、ドイツ連邦に加盟した。この間の混乱で消滅した周辺小国の地を併せ領土拡張、オスナブリュック、ヒルデスハイムなどを獲得した。1837年にイギリスとの同君連合を解消。1866年普墺戦争でオーストリア側につき敗北し、プロイセンに併合された。

 現在、この地域はニーダーザクセン州となっており、首府はハノーファーである。

<系図1 ハノーファー王家系を中心に>

オットー(ハインリヒ獅子公の孫,1235-52 ブラウンシュウァイク=リューネブルク公)
 ┃
 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
<古リューネブルク系>      <古ブラウンシュヴァイク系>
ヨハン                アルプレヒト1世
(1252-77)               (1252-79)
 ┃               ┏━━━━┻━━┳━━━━━━━┓
オットー2世         ハインリヒ  ヴィルヘルム  アルプレヒト2世
(1277-1330)          (1279-86)   (1279-92)   (1279-1318)
 ┣━━━━━━━━┓                 ┏━━━━┻━┳━━━━━━━┓
オットー3世  ヴィルヘルム            オットー   エルネスト   マグヌス1世
(1330-52)   (1330-69,69-88)           (1318-44)   (1344-45)    (1344-69)
                                           ┃
                                           ┃
   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
 ベルンハルト1世            ハインリヒ1世            フリードリヒ2世
(ブラウンシュヴァイク公1388-1428) (リューネブルク公1388-1416)         (1373-1400)
(リューネブルク公1428-34)           ┃                 1400年両系統合
<中期リューネブルク系>      ヴィルヘルム1世
   ┃                   (リューネブルク公1416-28)
   ┣━━━━━━━━┓          (ブラウンシュヴァイク公1428-82)
フリードリヒ    オットー1世          ↓
(1434-41,46-58)   (1434-46)        中期ブラウンシュヴァイク系へ
   ┃
   ┣━━━━━━━━┓
ベルンハルト2世  オットー2世
(1458-64)      (1464-71)
            ┃
         ハインリヒ2世
          (1471-1522)
  ┏━━━━━━━━━╋━━━━━━━━┓
オットー3世   エルンスト1世   フランツ
(1522-27分家)    (1522-46)    (1536-39分家)
            ┃
  ┏━━━━━━━━━┻━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
フランツ・オットー     ヴィルヘルム            ハインリヒ
 (1546-59)        (1559-92、ツェレ)          (1559-98、69ダンネンベルク公)
           <新リューネブルク系>          →新ブラウンシュヴァイク系へ
                 ┃
  ┏━━━━━━━━━┳━━━━┻━━┳━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━┓
エルンスト2世  クリスティアン  アウグストゥス     ゲオルク         フリードリヒ
 (1592-1611)   (1611-33)  (1633-36,ハノーファー)  (1636-41,ハノーファー)   (1636-48,ツェレ)
                                ┃
  ┏━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
クリスティアン・  ゲオルク・     ヨハン・      エルンスト・アウグストゥス
  ルートヴィヒ   ヴィルヘルム    フリードリヒ    (1679-98)
 (1641-65)     (1648-1705)     (1665-79)    <ハノーファー選帝侯 1692->
                                ┃
                              ゲオルク・ルートヴィヒ
                               (1698-1727, 英王ジョージ1世 1714-27)
                                ┃ <イギリスと同君連合-1837>
                                ┃
                             英王ジョージ2世(1727-60)
                                ┃
                             英王ジョージ3世
                             (1760-1820,<ハノーファー王 1815-66>)
 ┏━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
英王        英王        ケント公    エルンスト・アウグストゥス
ジョージ4世  ウィリアム4世     エドワード      (1837-51)
 (1820-30)     (1830-37)       ┃         ┃
                   英ヴィクトリア女王  ゲオルク5世
                    (1837-1901)    (1851-66、廃位、プロイセンに併合)
                                ┃
                                ○
                                ┃
                          <ブラウンシュヴァイク公>
                            エルンスト・アウグストゥス
                            (1913-18、廃位、共和制)

<系図2 中期ブラウンシュヴァイク系>

        リューネブルク公ハインリヒ1世
             ┃
   ┏━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━━━━┓
ヴィルヘルム1世                ハインリヒ
(ブラウンシュヴァイク公,1428-82)       (ヴォルフェンビュッテル公,1432-73)
   ┃
   ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
フリードリヒ                  ヴィルヘルム2世
(1482-84,83カーレンベルク公)         (1482-95,83ゲッティンゲン公)
                            ┃
        ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
<ヴォルフェンビュッテル公>          <カーレンベルク系>
     ハインリヒ2世              エーリヒ1世
      (1495-1514)               (1495-1540, カーレンベルク=ゲッティンゲン分与
        ┃                   ┃
     ハインリヒ3世              エーリヒ2世
      (1514-68)                (1540-84,85ヴォルフェンビュッテルと統合)
        ┃
      ユリウス(1568-89,85カーレンベルク公)
        ┃
     ハインリヒ・ユリウス(1589-1613)
        ┃
     フリードリヒ・ユリウス(1613-34)
         →カーレンベルクをリューネブルクへ
          ヴォルフェンビュッテルをダネンベルクへ

<系図3 ブラウンシュヴァイク公国>

ダネンベルク公ハインリヒ
  (1569-98)
   ┣━━━━━━━━━━━━┓<ブラウンシュヴァイク公>
ユリウス・エルンスト   アウグストゥス
  (1598-1636)      (1636-66, 35ヴォルフェンビュッテル)
                ┃
   ┏━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━┓
ルドルフ・アウグストゥス  アントン・ウルリヒ      ○
  (1666-1704)       (1704-14)          ┃<ベーヴァン家系>
                ┃        フェルディナント・アルプレヒト
      ┏━━━━━━━━━┫           (1735)
  アウグストゥス・   ルートヴィヒ・         ┃
   ヴィルヘルム     ルドルフ         カール1世
   (1714-31)      (1731-35)          (1735-80)
                             ┃
                        カール・ヴィルヘルム・フェルディナント
                            (1780-1815)
                             ┃
                   ┏━━━━━━━━━┫
                 カール2世     ヴィルヘルム
                 (1815-30)       (1831-84)

                             ↓
                 摂政:アルプレヒト・フォン・プロイセン (1885-1906)
                 摂政:ヨハン・アルプレヒト・フォン・メクレンブルク=シュヴェーリン (1906-13)
                             ↓
                 国王:ハノーファー王ゲオルク5世孫エルンスト・アウグストゥス (1913-18)